失くした翼のその跡にくちづけられる苦痛に
虚空に放つ悲鳴は音にもならず
ただ我と我が喉を引き裂いて嘆きを重ねるだけ
闇に見開いた瞳から
一滴の涙も零れはしないのと同じように
血塗れの背中を這うくちびるの熱さに
耐える事かなわず振り絞る慟哭も
何故にこの蒼褪めて震える唇を割るときは
この身体を
おまえが奏でる楽を鳴らす器へと変貌させる
おまえは失くした翼の具現
まざまざと目前に見せ付けられる喪失の苦い証
それだからおまえはこんなにも愛しく
それだからおまえはこんなにも痛い
寄り添う無慈悲な慰撫の手に引き攣るほどに痛む
未だ癒えぬ生乾きの欠落の痕跡
二度と再び手離すことなど出来ないだろう
羽ばたくことの快楽を忘れさせてはくれない
俺のこの新しい翼を
あなたがこの地上に存在してくれたから
今わたしは幸福の上に座っていられる
あなたがくれた言葉を、わたしは忘れない
ただ、ずっと信じ続けていられるほど
子供ではなくなってしまった自分が少し哀しいだけ
ひとごみの中から、いつもわたしを見つけてくれる
あなたが好きだった
愛ともいえず、それは自分勝手な欲望でしかなかったけれど
あなたが好きだった
何故だろう、いつも思い出すのは
凍てつく道で前を歩くコートの後ろ姿と
夏の日の眩暈ばかり
ひとつ足を前に踏み出すごとに
ほんの少しずつ貴方が遠くなる
振り向いて確かめてみれば
まだ笑ってくれているのかもしれないけれど
見上げる瞳は空の色を映し
浮かべる涙など知らないふりをして
心は高く、高く、もっと高く
ああ 昇っていけるのならいいのに
足元を踊る意地悪なシルフィード
翻る翼はもう持ってはいないけれど
石畳に硬い靴音を響かせて
ひとり
軽やかに強がりのステップを踏む